持たざる者

金原ひとみの『持たざる者』。
この本を読んだきっかけは、優れた震災後文学として紹介していた書評を読んだからだったと思う。
それぞれ別の人物の一人称で語られる4つの章。特に一つ目の章で描かれる、原発事故による意見の違いで妻子と別れ、仕事もできなくなってしまうデザイナーのヒリヒリとした心情告白は秀逸。
海外で生活する2人の姉妹それぞれの章もぐいぐい読ませる。特に原発事故がきっかけでロンドンに移住する妹の章は、作者自身の心情にもっとも近いのではないだろうか。文章量もいちばん多い。
面白いのは最後の章を語る主人公が、いきなりかなり平凡(でもないのかもしれないけど)な主婦になること。彼女の世界の中では、原発よりも放射能よりも、義兄夫婦との関係の方がよほど深刻で緊急な問題である。

私にとって原発事故後の放射線被曝による不安は、自分が少数派のマイノリティである事を再確認した問題だった。
そして結局は、自分の感性を信じるしかないのだと思う。優れた音楽や文学を、自分で選んでいくように。自分の生き方も、自分で選んでいくしかないのだ。たぶん。

持たざる者
集英社
金原 ひとみ

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