半島を出よ

村上龍の『半島を出よ』は、2005年の作品だったと思う。小説で描かれる事件が勃発するのは近未来の2011年の春。政府は首都機能を守るために福岡を封鎖する。
たぶん2016年の日本に生きている(マトモな)人なら確実に感じるデジャブ感。小説の前半は怖いぐらいにクールに、まるで優れたノンフィクションを読んでいる時のように、小説の世界に引き込まれてしまう。

そして小説の後半、冷静に描写されていた登場人物たちがアグレッシブに動き出す。まるで作者の制御から解き放たれたようにエモーショナルに。
私が一番好きなのは、こんな文章である。

何でもない、ゴーグルの隙間から削りカスが目に入ったんだ。ヒノは電動カッターをしっかりと握り直してそう答え、待ってろよ、と声に出さずに呟いた。かたきをとってやるからな、あんたの息子がこれからやることを、地獄からよく見てるんだぞ。公園の芝生の上で麻婆豆腐弁当を食べながら微笑んでいる母親の記憶を確かめながら、ヒノは何度もそう呟いた。

半島を出よ(下)より


半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫)
幻冬舎
村上 龍

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック